将来を見据えたバリアフリー住宅・バリアフリー設計

投稿日:2025.08.21

高齢化社会が進む日本において、「バリアフリー住宅」という言葉を耳にする機会が増えてきました。今はまだ必要性を感じていなくても、10年後、20年後を見据えた住まいづくりを考えることは、ご家族の安心と快適な暮らしにつながります。

今回は、バリアフリー住宅の基本的な考え方や、導入のメリット、具体的な設計のポイントまでをわかりやすく解説します。新築はもちろん、リフォームを検討されている方にも参考になる内容です。

バリアフリー

バリアフリー住宅とは?

バリアフリー住宅とは、高齢者や障がいのある方が日常生活を送るうえで障壁となる段差や狭い通路などをなくし、安全かつ快適に暮らせるように設計された住まいのことです。

ただし、バリアフリーと一口に言っても、「段差の解消」だけではありません。加齢によって筋力が衰えたり、視力が低下したりすることを想定して、日常生活のあらゆる動線を安全に保つための工夫が求められます。

なぜ今、バリアフリー住宅が注目されているのか?

総務省の発表によると、2025年には日本人の約3人に1人が65歳以上になると言われています。介護が必要となる前に、住まいを安全で快適な空間に整備しておくことが重要です。

日本の人口ピラミッド

医療や介護の方針が「施設」から「在宅」へと移行しつつあります。自宅での介護を前提にした住まいであれば、家族も介護者も無理なく暮らすことができます。

必要になってから急いでリフォームをすると、費用も高くつきやすく、工事中の生活も不便になりがちです。初めからバリアフリーを想定した設計にしておけば、将来の負担を軽減できます。

バリアフリー住宅の基本ポイント

室内の段差をなくすことは、バリアフリー住宅の基本です。つまずきや転倒のリスクを軽減するために、玄関から各部屋、トイレ、浴室にいたるまで、フラットな床面が望ましいです。

また、敷居の段差も小さな事故につながるため、できる限りフラットな設計にすることが重要です。

将来的に車いすや歩行器を使用する可能性を考え、ドア幅や廊下幅を余裕のある設計にしておくことが大切です。目安としては、廊下の幅は少なくとも80cm以上、できれば90cm以上あると安心です。

階段、トイレ、浴室、玄関など、身体を支える場所には手すりの設置が有効です。初めから下地を入れておけば、将来的に必要になったときに簡単に設置できます。

浴室や玄関など、水で濡れやすい場所には、滑りにくい素材を選ぶことで安全性が向上します。また、素材の柔らかさにも配慮すると、転倒時の衝撃も和らげることができます。

開き戸はスペースを取るうえ、車いすでは開閉が難しい場合があります。引き戸であれば開閉しやすく、空間も有効活用できます。

新築時にバリアフリーを取り入れるメリット

新築であれば、間取りの自由度が高いため、将来の暮らしを想定した柔軟な設計が可能です。例えば次のような工夫ができます。

  • 将来1階だけで生活が完結する間取りにする
  • 階段を緩やかに設計する
  • 寝室とトイレを近くに配置する
  • リビングに段差なくつながる和室をつくる

また、住宅性能として「長期優良住宅」や「高齢者等配慮住宅」として認定されることで、補助金の対象になることもあります。

老人納得

バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

似たような言葉に「ユニバーサルデザイン」がありますが、これは「すべての人にとって使いやすい設計」という考え方です。バリアフリーが「特定の人のための配慮」なのに対し、ユニバーサルデザインは「誰にとっても快適」という点が特徴です。

バリアフリーの考え方をベースに、ユニバーサルデザインも取り入れることで、年齢や障がいの有無に関係なく、誰にとっても優しい住まいが実現できます。

バリアフリー住宅への補助制度を活用しよう

バリアフリー対応の新築・リフォームには、自治体や国の補助金・助成制度が活用できる場合があります。

例)要介護認定を受けている場合の住宅改修費の支給

介護保険制度の一環として、最大20万円までの住宅改修に対して9割補助されるケースもあります。

その他にも、省エネや長期優良住宅の取得に関連する補助制度との併用も可能な場合があるため、計画段階から工務店と相談し、制度を上手に活用することがポイントです。


バリアフリー住宅は「今」の安心と「未来」の備え

バリアフリー住宅は、高齢者や障がいのある方だけのものではありません。将来のライフスタイルの変化に柔軟に対応できる「備え」として、多くのご家庭にとって有効な選択肢となります。

新築時に取り入れておくことで、将来的な安心感とコスト面でのメリットを得ることができます。ご家族の健康や生活スタイルを見つめ直す良い機会として、ぜひ一度「将来を見据えた住まいづくり」をご検討ください。

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