漆喰の壁は、なぜ時間とともに美しくなるのか
「還元作用」と呼ばれる現象を、わかりやすく解説します
「漆喰には還元作用があるので、汚れが目立たなくなります。」
自然素材の家づくりを調べていると、このような説明を目にすることがあります。
しかし、「還元作用」と聞いても、何となく体に良さそうなイメージはあっても、実際にはどのような現象なのか分からない方も多いのではないでしょうか。
今回は、漆喰の化学的な仕組みと経年変化の関係を、できるだけ分かりやすくご紹介します。
漆喰は、時間をかけてゆっくり完成する壁
漆喰の主原料は石灰です。
石灰岩を焼いて生石灰を作り、それに水を加えると「消石灰」になります。この消石灰が漆喰の主成分です。
左官職人が塗った直後の漆喰は、実はまだ完成ではありません。
壁の中では、空気中の二酸化炭素を少しずつ取り込みながら、再び石灰岩に近い「炭酸カルシウム」へ戻る反応が何年もかけて進みます。
この変化を「炭酸化」といいます。
つまり漆喰は、家が完成したあともゆっくりと成熟していく建材なのです。
「還元作用」とは何を指しているのでしょうか
住宅業界では、この炭酸化や漆喰の化学的な性質をまとめて「還元作用」と表現することがあります。
ただし、化学でいう還元反応とは意味が異なるため、少し誤解を招きやすい言葉でもあります。
実際に起きているのは、
- 空気中の二酸化炭素を取り込みながら硬くなる
- 強いアルカリ性を持つことでカビなどが繁殖しにくい環境をつくる
- 表面がゆっくり変化し、壁全体の風合いが落ち着いていく
といった現象です。
これらが組み合わさることで、「年月とともに美しくなる壁」という印象につながっています。
当社事務所で行った実験
私たちは以前、「漆喰は本当に汚れが残るのか」を確かめるため、当社事務所の壁で実験を行いました。
使用した壁材は田川産業の「城かべ」です。
壁に醤油を付着させ、その後は一切メンテナンスをせず、通常の事務所環境で経過を観察しました。



約1年3か月後に撮影した写真を見ると、完全に消えたわけではないものの、醤油のシミは当初よりかなり目立たなくなっていました。
もちろん、これは一つの事例です。
すべての汚れが自然に薄くなるとは言えませんし、付着した物質や環境条件によって結果は異なります。
しかし、「一度汚れたら元に戻らない」というイメージとは少し違うことが分かります。
なぜシミが目立ちにくくなるのか
漆喰は、塗った瞬間が完成ではありません。空気中の二酸化炭素を取り込みながら炭酸化が進み、年月を重ねるごとに素材そのものがゆっくりと成熟していきます。
そのため、壁全体の質感や色合いも少しずつ落ち着き、施工直後には目立っていたシミや色の違いが、時間の経過とともに壁の表情になじんで見えることがあります。
私たちが事務所で行った醤油の実験でも、約1年3か月後にはシミが完全に消えたわけではありませんが、当初よりかなり目立ちにくくなっていました。これは一つの要因だけではなく、炭酸化による素材の変化や、壁全体が経年変化していくことで生まれた結果だと考えられます。
新品を保つ素材ではなく、育てる素材
現在、多くの住宅ではビニールクロスが使われています。
汚れを拭き取りやすく、均一で美しい仕上がりになることが大きな魅力です。
しかし、「表面が破れる」「継ぎ目が目立つ」「部分補修が難しい」などの特徴もあります。
一方、漆喰は少し考え方が異なります。
「静電気が起きにくくホコリを寄せにくい」「部分補修がしやすい」「調湿性能がある」などの特徴があります。
多少の傷や汚れも、年月を重ねる中で家全体の表情に溶け込み、暮らしの歴史として刻まれていきます。
アンティーク家具や無垢材が使い込むほど味わいを増すように、漆喰もまた時間そのものが魅力になる素材です。
だから私たちは、「新品の白さを何十年も保つ壁」としてではなく、「家族と一緒に育っていく壁」として漆喰をご提案しています。
自然素材だからこそ、実物をご覧ください
漆喰の魅力は、カタログや写真だけでは伝わりません。
光の反射、質感、空気感、そして年月を重ねた風合いは、実際に空間に立って初めて感じられるものです。
当社の常設モデルハウスでは、漆喰や無垢材を使った住まいをご体感いただけます。
「自然素材は憧れるけれど、お手入れが心配」
そんな方こそ、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは、メリットだけでなく、自然素材と上手に付き合う方法も含めて、実際の施工事例や経年変化をご覧いただきながらご説明しています。
家は完成した日がゴールではありません。
10年後、20年後に「この家で良かった」と思っていただける住まいづくりを、私たちは大切にしています。
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